スワンボートを漕ぎながら

元文学部生のぼやきです

『グッド・ストライプス』 平凡な日常を魅力的に映す

ずっと観たかった『グッド・ストライプス』を観て来ました。


『グッド・ストライプス』予告編 - YouTube

 実は『マッドマックス』を観た後に立て続けに観たんですね。

「テンションの切り替え難しいかな」と心配していましたが、どちらも楽しめました。

マッドマックス』も非常に面白かったです。吹っ切れていて、スカッとする感じ。でも私は、その後に観た『グッド・ストライプス』に惹かれてしまいました。

働いて疲れた後のビールは美味しいです。しかし、私はそんなに働いていないので(大学四年で文学部)、「居酒屋で乾杯!」よりも「カフェでまったり」の方が好きなんですよね。「生ビールも好きだけどたまにでいいや、やっぱホットミルクだな」そんな感じです。社会人になってからは、マッドマックスのようなハードアクション中毒に陥っているかも知れませんが。

真生・緑というカップル

 真生役の中島歩さんは、作中では朴訥とした薄いキャラを演じています。クラスにいても卒業後には忘れられてしまいそうな人柄です。しかし、なぜか彼の周りには人が多いんですよね。友人グループとは仲が良く、友人の結婚式後には大学時代の女性と再熱したり。あと就活をどうやって乗り切ったのか、ぜひ教えていただきたいです。公務員だったら分かるのですが。

 一方の緑役の菊池亜希子さんは、THE文化系女子という感じです。部屋にはたくさんの漫画があり、オシャレなレストランで働いていたり。自分に正直で強そうなのですが、友人のライブに呼ばれなかっただけで拗ねてしまうなど、可愛い面もあります。なんと言ってもラストの白無垢姿が美しいです。作品の中盤に出てくる真生が撮った緑の写真と比較して欲しいです。「本当に同じ女優さんなの!?」ってぐらい、白無垢姿の緑が綺麗で魅力的。もちろん真生の袴姿や横顔も格好いいです。

★★★

 また、二人がどういった経緯で付き合ったのかは本編では説明されません。さらに二人の性格は対極で、友人には「別れたんじゃなかったの?」と聞かれるほどです。しかしなぜか長く続いており、結婚まで向かうんですね。それは、お互いが支え合って生きているからです。

緑の黒歴史を知った時も、ワガママな態度の時も、真生は全て受け入れます。それは優しさとはどこか異なり、面倒だからという理由でもありません。しかし、そんな真生の怒りが爆発するときもあります。母親と離婚した実の父親が愛人をつくり、さらに愛人が妊娠していること、そのことを自分に隠していたこと。やり場のない怒りを緑にぶつけるのですが、ここでは反対に緑が真生を支えるんですね。

観ていると、この「マンネリ」カップルが羨ましくなります。

平凡な日常における些細な輝き

物語内では、大きな出来事が起こりません。結婚までの過程を通して、二人の愛(というより絆?)が深まって行くのですが、本当に少しずつ進展していくんですよね。ですので、多くの場面は「何気ない日常」が描かれています。

 趣味の違いによる些細な喧嘩や、疎遠になっていた家族との再会など。本当に何気ない日常の一コマですよね。でも、本作はそれが非常に魅力的で心温まるんですね。

 脚本は監督が担当されたらしいのですが、この「何気ない光景を魅力的に見せる」感じが山崎ナオコーラさんの小説っぽいです。

ナオコーラさんは人のセックスを笑うな『ニキの屈辱』を書いていらっしゃる方で、私が大好きな作家さんです。大きな出来事は起きないけれど、それでも楽しく魅力的な作品に仕上げるのが上手な方で本作品もどこかそんな雰囲気があります。

★★★

しかし、「何気ない日常」を描いた作品は見方によっては、非常に「退屈」に映ってしまいます。「邦画は退屈だ」と言われる理由の一つもこれだと思います。ただ私は、「退屈だ」と感じるのは自分の問題だと思うんですね。

現代社会には多くの面白いコンテツが溢れ返り、私たちはそれらを急速に消費していきます。そして、さらなる「刺激的」な作品を求めるわけですが、それは一種の感覚麻痺であり、次第に「自分の周囲で起こる魅力的な出来事」に気付かなくなってしまう。これは非常に不味いです。

この問題は『マッドマックス』と関連させて考えることもできますね。いや、でも批判的に成らざるを得なそうなので、また機会を改めて考えたいと思います。

 めくるめく僕らの出会い 

最後に、二人が結婚式を挙げて物語は終わります。この結婚式のシーンも、菊池亜希子さんの白無垢姿も良いのですが、何と言っても大橋トリオの曲が素晴らしいです。


大橋トリオ / 「めくるめく僕らの出会い」 (映画『グッド・ストライプス』主題歌) - YouTube

 観終わってから繰り返し聴いています。自分の中で大橋トリオブームが到来し、この曲以外にもアネモネが鳴いた』なども聴いています。

 珍しく「もう一回観たい!」と思わせる作品でした。もしかしたら、今年一番面白かった作品かも知れません。