スワンボートを漕ぎながら

元文学部生のぼやきです

『バケモノの子』 夏限定で消費される「ラムネ」みたいな作品

昨日、細田守監督の『バケモノの子』を観に行きました。
なんと言うか、細田作品にハズレはあるのか?と思えるほど、毎回面白いですよね。脚本や演出も見事だし、何より登場人物が魅力的に描かれています。
ただ、私は「来年の夏にもう一回観れればいいや」と思ってしまいました。この感想については後ほど説明しますが、私が細田作品が大好きであることには変わりありませんので、誤解の無いよう先に言っておきます。

今時の大学生が好きそう

観終わってまず浮かんだ感想は「今時の大学生が好きそうな作品だなぁ」というものです。具体的に言うと、主人公・九太と熊徹が暮らす街に憧れる大学生が多そうだなと。
狭い土地に立ち並ぶ家々、色彩豊かな外壁、荒涼として平坦な土地など、自然と共存して暮らしている感じがしますね。
おそらく舞台となったのは、メキシコのグアナファトでしょう。
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現在大学生として生活している私の実感なのですが、大学生って海外旅行大好きですよね。海外でバックパッカーとかよく聞きます。
私自身もフィリピンやサイパンに行きましたが、日本では体感できない、何か刺激的で感覚的なものが、海外にはあるんですよね。
中でも大学生に人気なのが「ウユニ塩湖」。雨季には地面が鏡のようになり、空の色が反響して上下対称の光景となる、あの場所です。
最近はアニメのOPでも使われていますよね。見る度に「絶対大学生の視聴者意識してる」と勘繰ってしまうのですが、美しい光景であることは確かです。

私は、熊徹たちが暮らす街に、ウユニ塩湖が持つ魅力と同じものを感じたんですね。非日常的で刺激的な、今時の大学生が好きそうな場所。よく「自分探し」と称して海外を一人で旅行する大学生がいますが、彼らが好みそうなスピリチュアルな雰囲気も、グアナファトにはあります。

今年か来年の夏休みは、グアナファトに行く大学生が増えるのではないでしょうか?

夏限定で消費される「ラムネ」みたいな映画

もう一つの感想ですが、具体的に説明していきます。

これはあくまで私のイメージですが、細田作品の特徴として「夏限定で観たくなる」作品が多いんですよね。「時をかける少女」と「サマーウォーズ」は当然ですが「夏」、おそらく「バケモノの子」も「夏」でしょう。「おおかみこどもの雨と雪」は、私自身も季節関係なく年中見返してはいますが、やはりどこか「夏」のイメージがある。雪山を転がり落ちるシーンは冬に観ると言うより、夏に観て清涼感を味わうといった感じがします。

また、細田作品はどうしても宮崎駿作品と比較されますよね。今年からここに新井作品(コロリド)も加わるのでしょうか。

私はこの問題に関しては、宮崎作品=芸術に近い、細田作品=大衆向けだと考えています。というのも、宮崎作品は観終わった後に「スッキリしない」のに対し、細田作品は「スッキリする」んですよね。
言葉を変えてみましょう。
宮崎作品は「鬱屈感」が残るのに対し、細田作品は「爽快感」が残る。

宮崎作品の鬱屈感とは、具体的には、あくまで肯定的な「違和感」「疑問」「腑に落ちない感じ」と言ったものです。
その原因は何かと言うと「脚本の複雑さ」だと考えられます。宮崎駿は絵コンテを書きながら脚本を考えている訳ですから、当然複雑な物語になり、テーマは深層に隠れてしまいます。その複雑な脚本が、作品を観終わった鑑賞者を考えさせ、作品を芸術っぽく見せている。
一方の細田作品は「脚本が上手」なんですね。不要な部分を削ぎ落として、テーマを表面に出して、わかりやすく、伝わりやすくしている。そのため、観終わった後に「爽快感」が残る。

ただし細田作品は、上手な脚本ゆえに多くの観客を呼びますが、それはあくまで「大衆向け」作品なんですね。
また本作は、今までの細田作品よりもターゲットとする年齢層が低く、よりわかりやすい(大衆向け)作品となっている。
そこで私は、大衆が好きな炭酸飲料から、夏と言えば「ラムネ」ということで、本作を「夏限定で消費されるラムネみたいな作品」だと考えました。

★★★

なかなか強引な進め方でしたが、みなさんは「バケモノの子」をどのように考えましたか?本作は多くの人が観て、多くの感想が書かれるでしょう。誰もが発見するテーマから、個性的な解釈まで。
今回の私の解釈に関して「それは違うでしょ!」「面白かった!」などの反応をしていただけると嬉しいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。