スワンボートを漕ぎながら

元文学部生のぼやきです

猫の尻尾とLINEのスタンプ(遊びの誘いを断るのが心底面倒くさい)

今回は谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に掲載されている随筆の一部、「客ぎらい」を読んだ感想について書こうと思います。ですが、どうしても私個人の人間嫌いについて話したくなり、記事の大半を私の愚痴が占めるという結果になってしまいました。ご了承ください。

陰翳礼讃 (中公文庫)

陰翳礼讃 (中公文庫)

私は昔から人との交流が嫌いでして、可能な限り交流を避けて生きてきましたし、今後も一人の時間を長く持ちたいと思っています。人間個人は大好きです。人間観察なんかは、履歴書の趣味欄に記入しようか悩んだほどです。

★★★

しかしそれはあくまで「他人」に限った話で、関係が「知人」に変わってからは常に警戒してしまい、強いストレスを感じてしまうんですね。その警戒心は「知人」から「友人」に変わっても解ける事はなく、むしろ「友人」の方が厄介なものになります。

というのも、知人であれば滅多に遊びに誘われることはありませんが、友人であれば頻繁に遊びに誘われるからです。私は極力一人で過ごしたいので、なるべく友人を持ちません。さらに言えば友人になる可能性のある知人とは出会わないよう心掛けています。

ですが所属する団体や大学のゼミでの交流は親密なので、知人から友人へのシフトが簡単に、いつの間にか行われているんですね。私としては「ちょっと待ってよ!」と流れを食い止めたいのですが、そうすれば共同体の空気を乱しかねない。卒業するまでは所属していなければいけないので、これは自分の立場上非常に不味い。
ですので卒業までの間、周囲の人々を極力「知人」の枠に抑え込むよう努力し続けなくてはいけません。本当に面倒くさい。

★★★

ここまで読んだ方の中に「寂しい奴だなぁ」と憐憫の情を向けてくれる方がいるかと思います。申し訳ございませんが、もう少しだけ吐露させてください。

関係が知人から友人にシフトした人からのお誘いですが、大抵は「用事あるから行けない!」で済ませています。今年になってからは「就活」という言い訳ができて、容易に、また罪悪感を覚えずに断れるようになりました(就活万歳!)
その結果、私にとっては嬉しいことに着々と友人が減っています。

現在仲が良いのは数人程度です。でも、関係は「親友」と呼んでいいほど。言い忘れていましたが「友人」までの関係は非常に面倒なのですが、そこから「親友」に変わると、会うのが苦でなくなるんですね。相手も私の性格を熟知しているからでしょうか、一週間一緒に過ごしても平気だと思います。
「百人の友より一人の親友」という言葉がありますがまさにそれです。大学生活で数百人の人と会話をしたと思いますが、親友になれたのは数人ほど。それ以外の「知人」とはなるべく会わないよう意識して暮らしています。この「意識して避ける」のもなかなか疲れるんですよね。至極面倒くさいなぁ。

谷崎潤一郎が望んだ「猫の尻尾」

私の愚痴を一通り読んでいただき、ありがとうございます。スッキリしたので本題に入ります。

私は、日本社会において私のような交流嫌いの人間は多数派なのではないか、と勝手に思っているんですね。文豪の谷崎潤一郎も客嫌いで有名ですよね。あと「永井荷風」なんかもそう。
特に執筆中の訪問客を嫌った谷崎。彼は『陰翳礼讃』「客ぎらい」の中でこんな事を書いています。

(猫が返事をするのが面倒な時に尻尾だけを振る仕草を指して)私は尻尾がありさえしたら、ちょっと二三回端の方を振って置いて、構わず執筆を続けるなり思索に耽るなりするであろう。『陰翳礼讃』149頁より

私は谷崎の正直さが好きです。こんな事、相当な自信家でないと書けませんよね。

この文章を読んで「私の人間嫌いはそこまで酷くないなぁ」と安心してしまうほど、彼の客嫌いは相当なものだったと推測されます。もしも彼が現代に生きていたら、人間関係の複雑さに疲弊していたことでしょう。

彼が羨ましがった「猫の尻尾」。自分の意思を言語化せずに伝達できるので非常に便利です。ただ、飼い主が尻尾の動作の意味を理解していることが前提となります。

★★★

ふと頭に浮かんだのですが「猫の尻尾」と「LINEのスタンプ」って似てませんか?

例えば、知人から遊びのお誘いが来たとします。私は当然のように断りたいのですが、言葉にして嘘をつくのは気が引ける。そこで「ごめん!」を表現するスタンプを送信する。この「ボタンを二三回押す」動作と「尻尾を二三回振る」動作は、動作的にも機能的にもほぼ同じではないでしょうか?

また、スタンプを送信した側としてはもう流れた話だと解釈していますが、大抵の知人は行けない理由を聞いてきますよね。その理由に対しては言葉で返さなくてはいけないので非常に面倒なんですが、もしも相手が私のスタンプの意図を読み取ってくれれば「了解!」と返ってきて、問題は生じません。これは飼い主が「猫が尻尾を振るのは、返事するのが面倒だからだ」と意味を理解していれば納得がいくのと同じです。

★★★

では、相手に「私がこのスタンプを使ったら、素直に諦めろ!」と理解させるにはどうすればいいのか?
プロフィール欄に「スタンプでしか返事しません」と書いておくのは流石に失礼ですし、一層のこと「もう誘わないでください!」と宣言して関係を絶ってしまった方が早い気もします。でも所属する団体の空気を壊すのだけは避けたい…。

あれ、やはりLINEのスタンプは猫の尻尾ほどの機能性を所持していないのかも知れません。スタンプ機能は簡単に自分の意思を伝えることができますが、それはあまりに直接的で、むしろ嘘をつく罪悪感を克服して言葉を用いた方がいいような気もします。

人間関係は本当に面倒くさいです。私自身、この性格を修正する努力をした方が生きやすいのでは?と何度も考えているのですが、その度に「悩むのは時間の無駄だ」と開き直っています。性格を変える努力をするよりも、この性格のまま生きる方法を模索するべきだと私は思っています。

猫の尻尾のような物があれば万事解決なのですが。一層のこと、私は猫になりたいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

関連記事

matlune.hatenablog.com