スワンボートを漕ぎながら

元文学部生のぼやきです

『her/世界でひとつの彼女』を観た

 昨夜、暑苦しくて寝つけなかったので、借りてきた映画を観ました。扇風機買おうかな。

her/世界でひとつの彼女 [Blu-ray]

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 日本では一年ほど前に劇場公開されていましたね。
 監督・脚本はスパイク・ジョーンズ。『マルコヴィッチの穴』や『かいじゅうたちのいるところ』の監督も担当されています。

言語化するのは難しい、でも楽しい

 本作は、主人公と人工知能型OS(女性)との恋愛がテーマです。下手をすれば妄想全開の作品に成りかねないテーマですが、本作はそんな観客の心配を裏切り、さらには期待以上の恋愛映画となっています。それは、主人公・セオドアの職業が代筆ライターということもあり、物語内で語られる言葉が非常に魅力的であるからだと思います。
 
 主人公と彼のOS(サマンサ)とのコミュニケーションは「言葉」によって行われます。言葉を通して自分の心情、思考、表情を相手に伝え、さらには言葉を通して、相手を理解します。一見すると単純ですが、これが非常に難しい。
 私たち人間同士だと、ほとんどの場合、先に「視覚的な関係」がありますよね。道端で知人を「発見」し声をかけたり、逆に相手に発見され声をかけられたり。視覚によって相手を認識する。

 しかし、本作において主人公の相手は、肉体を持たない人工知能型OSですので、主人公は視覚、さらには触覚や嗅覚、味覚(稀ですが)によって相手を認識することできません。肉体の不在によって、主人公と人工知能は各々葛藤するわけですが、このような関係において、自分の内側を「言語化」する作業というのが非常に重要になってきます。

 私は昔から自分の考えや好きなモノを「言語化」して他者に説明するの苦手で、よく周りから「無口」だとか「大人しい」と言われてきました。コミュニケーションはもっぱら聞き役で、その方が私にとって楽だったんですね。matlune.hatenablog.com

 でも生きている限り、徹底して聞き役でいるという訳にもいきません。なので少しずつですが、自分の内側を言語化し、他者に対して開いていくようになりました。ただ、これが非常に難しいんですよね。相手に誤解を与えてしまったり、会話に詰まってしまったり。
その結果、自分の内側を言語化することは好きになりましたが、他者に対して開くことが嫌いになりました。真剣な会話を避けて上辺だけで相手に向かい合う。これは、自分はもちろん、相手にとっても退屈で不愉快なものですよね。

★★★

 一方、本作の登場人物たちは「会話」が楽しくて仕方ないと言った感じで、そのエネルギーは観客である私たちにまで届くほどです。というのも、本作を観終わった後、無性に誰かと「会話」をしたくなるんですね。自分の話を聞いてほしいという一方的なものではなく、相手の話も聞いてあげたい。
 それは、電話やLINEでは駄目です。直接会って相手の目を視て会話をしたい。
 
 これはもしかしたら、一人で過ごす時間が長い私に限った体験かも知れません。でも、本作は私たちに向け、日常的なコミュニケーションの価値を再提示してくれています。

 最後に、みなさんは「会話」を楽しんでいますか?

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